震度0

著者
出版者
朝日新聞社
価格
¥1,890

評価・詳細レビュー

(5.0点)
警察内部というよりも組織の中で戦わねばならぬ閉じた世界のや
るせなさ。仕事場だけでなく家庭にも裏表を持ち込む組織内の争
いの陰惨さを描き出そうとした著者の意図がくみ取れる。

震度0というタイトルには様々な意味を込めてのものであろうが、
それは、表だって力に訴えることなく、背後では後ろ暗い陰謀を
張り巡らせる力の表現であり、物語の背景で同時進行している阪
神・淡路大震災の震度7の惨状を尻目に身内で争う様を対比する
指標としての震度0であったりする。もちろん、自然の力に対す
る人間の争いの小ささを表す尺度であったりもする。

実際の被災者である私にとっては、あの現場に立ち会っていない
者どもの醜さとして、この対比の手法は効果を上げているように
思えるのだが、本筋に関係ない、あくまで著者の意図をより鮮明
に浮き彫りにするためだけの地震の取り上げ方については賛否両
論があろうと思われる。

'12/03/2-12/03/3

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