新参者

著者
出版者
講談社
価格
¥1,680

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加賀シリーズ8作目。

評価・詳細レビュー

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私が人形町界隈に通勤していたのは今から数年前、1年半ほどの
期間であった。縁があって人形町を本拠とした会社設立に参画す
ることになったのだが、その会社と縁が切れた今に到っても、設
立に立ち会ったことは、私の仕事スタイルにとって重要な影響を
与え続けている。

そしてその期間、勤め人としての立場で関わった人形町も、私の
中で非常に良い印象を、今に到るまで残し続けている。昼飯を求
めて路地から路地をうろつき、仕事の休憩時間にベランダから見
降ろした、活気ある街の風景など、人形町の魅力を堪能した1年
半だった。

なので、本書には実際に街で過ごした者として、単なる読書体験
以上の共感を覚えるとともに、新参者としてここまで人形町の市
井を作る人々と関係を作り上げた、著者と主人公である加賀刑事
に羨望と嫉妬すら覚える。

人形町を知る者には心当たりのある街並みと店舗。実名こそださ
ないものの見当がつけられる店の店員や主人たちが、加賀刑事の
丹念な聞き込みによって、それぞれの抱える人情の温かみと機微
に気づかされていく。

加賀刑事といえば、すぐれた洞察力と冷静な論理の裏側に隠れた
人情の篤さによって魅力的な人物造形がされているが、本書では
人形町に住む人々の人情と、加賀刑事自身の人情が言葉のやりと
りから深みをましながら交わされる。「新参者」とは排他的のよ
うでいて、実はそうではない反語的な題名の付け方と感心した。

旅情ミステリとは一線を画す、深い街への造詣と、磨きあげられ
た人物観察が成し遂げた、秀逸な小説として、本書は外せないし
、人形町を紹介するにあたり、本書を候補を挙げることに、何ら
ためらいはない。

私が都心で開業するとしたら、人形町は第一候補地であり、開業
なったら、本書を片手に街の散歩をしてみたいと願うばかりであ
る。

'12/04/16-12/04/17

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