骨の記憶

著者
出版者
文藝春秋
価格
¥1,800

つぶやき

一気読み。相変わらずラストが微妙・・・

評価・詳細レビュー

(5.0点)
著者の名前はミステリ関係のランキング本や新古書店などで目にしてい
たけれど、手に取るのは初めて。

浅い見方をすればプロットは集団就職での裸一貫での状況からバブルに
踊るまでの日本昭和史を背景に絡めたサクセスストーリーで、有りがち
といえば有りがちな内容である。が、それだけで切って捨ててしまうに
は惜しいほどのディテールが込められている。特に前半部、主人公が東
北で貧富の差をかみしめつつ、とある出来事にまきこまれるまでの展開
において、実に骨太で気合の入った描写が続く。東北弁が縦横に駆使さ
れていて、ほとんど意味がつかめないほどである。私は東北出身者では
ないので東北弁が妥当な使われ方をしているのかどうかわからないが、
上京後の主人公の運命の変遷によって主人公の言葉が徐々に標準語に置
き変わっていく様など、丁寧な描写がなされていることに好感が持てた。

凡百の成功譚や、見せかけの成功を戒める教訓譚からこの本が一線を画
しているのも、この丁寧な描写に尽きると思う。

主人公が運をつかみ始めるところから話の展開が速くなるのは、よくあ
る偉人伝と同様な流れであり、成功者の孤独やむなしさ、それを覆う上
流社会の暗さの描写もきっちりと押さえた筋の展開は安心して読み進め
られる。だからといって単調な筋展開に陥らないのは、冒頭に仕掛けら
れた伏線がかなり印象に残るものであるからであり、どのように主人公
が自らの人生の落とし前をつけるか、についての興味は持続し、ページ
を繰る手は休まらない。

戦後日本が国際経済で覇を唱えるまでの道行と、主人公のそれを重ねて
読むことで、戦後日本の光と闇を、集団就職という視点から追体験する
ことも可能な小説である。

'11/12/03-'11/12/05

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(4.0点)

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