私のマルクス

著者
出版者
文藝春秋
価格
¥1,700

評価・詳細レビュー

(5.0点)
最近、言論者として売れっ子の著者であるが、その言説には臭み
を感じず、私も違和感なく御説を拝見している。

といっても私も読む言論雑誌などホンの一握り。最近は新聞さえ
ろくに読んでいない状態だけに、御説に関してどうこういうつも
りは毛頭ない。ただ、著者の論調には右だ左だといった偏りがな
いように思える。自ら律してバランスを保つというよりは、骨太
な筋がどすんと通っていて、ぶれないという印象を受けていた。

本書を読み、その骨太な筋を作り上げた年輪の一端に触れること
ができたように思う。

いうならば、著者の思想史であり、思想の自叙伝である。

不勉強故に、著者が神学部出身ということを知らずにいた私。そ
もそも神学系の書物など、新約・旧約の両聖書ぐらいしか読んだ
ことがない。当然、文言から○○伝の○○章を即座に結びつけら
れるような教養も足りない。

なので、インテリジェンスと神学とマルクス主義がなかなか結び
つかなかったけれど、著者が何故外務省を志すようになったのか
という経緯について読み取れた。また、マルクス主義といえば、
学生運動やセクトの争いなど、枝葉に視点が行きがちである。し
かし、本書からはイデオロギーではなく学問としてのマルクス主
義を探求する著者の姿勢が読み取れる。学問としてのマルクス主
義は、涸れた泉ではなく、まだ得るものもあるのではないか、と
という思いも受けた。

本書を読んでいて、著者の真面目な物事の捉え方に感銘を受ける
思いである。が、ここまで真摯に学問を追い求めた人も、外務省
という組織の中では生き切ることができなかった。私がいうこと
は失礼ながら、個人の内面で真理を追い続けることと、組織の中
で組織の意を体現すべく歯車となることは、人生の中で両立でき
るのだろうか、という疑問がぬぐえない。

その疑問を払拭するためにも、著者の他の著作には目を通し、外
務省を追われた顛末や、神学的な真理探究のその後について、読
んでみたいと思う。

'12/05/02-12/05/10

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