人間の未来―ヘーゲル哲学と現代資本主義 (ちくま新書)

著者
出版者
筑摩書房
価格
¥945

評価・詳細レビュー

(5.0点)

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引用

 「自由」が人間的欲望の本質契機として存在するかぎり、人間社会は、長いスパンで見て、「自由の相互承認」を原則とする普遍的な「市民社会」の形成へと進んでゆくほかはない。ここに含まれる社会の理念は以下のようである。
 どんな国家においても、また国家間においても、普遍暴力状態が制御され、政治と経済と文化における自由な承認ゲームの空間が確保されてゆくこと。このことによって、すべての人間が、宗教、信条、共同体的出自、言語、職業、その他の条件によって差別されず、つねに対等なプレーヤーとして承認しあうこと。
 これを絵に描いたストーリーにすぎないと言う人もいるだろう。しかしわたしとしては次のように言いたい。近代社会の理念は、人類史上、普遍的な支配と隷従の構造を根本的に変革しうるはじめての「原理」として登場した。それは万人の欲望の「自由」の解放ということに定位されていた。ヘーゲルがこれにつけ加えたのは、人間的「自由」の本質の解放の可能性という構想だった(マルクスもまた同じ理念をもとに、社会主義を構想した)。わたしが試みたのは、この基本構想を展開するとどこにゆきつくことになるか、ということであって、人間と社会についての一つの想像的な「理想図」を描くことではない。
 つまり、われわれは、いま、将来的に大きなコストと努力を注いで、世界大の人間的「自由」の実現に向けてゆっくりと進む方向を選ぶか、それとも、そんな努力はあきらめて、現在の高度な資本主義がどこに進むかを批判的シニシズムによって眺めているだけか、という選択肢の前にいる。そして、前者を選ぶならば、それは「普遍ルール社会」の構想へと向かうことになるのである。
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「自由」が人間的欲望の本質的な契機として存在するかぎり、人間社会は、長いスパンで見て、「自由の相互承認」を原則とする普遍的な「市民社会」の形成へとすすんでゆくほかない。 (P267)
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どのような国家であれ、大多数の人民がひとたび「自由」への欲求を自覚しそれを望むかぎり、国家の「正当性」の根拠は、それが人々の「自由」を解放してゆく方向をとるか否かに定位される。
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