ノルウェイの森 下 (講談社文庫)
「本当に同じことなんだよ。遅いめの朝飯と早いめの昼飯のちがいくらいしかないんだ。食べるものも同じで、食べる時間も同じで、ただ呼び方がちがうんだ」
僕はあきれて永沢さんの顔を眺めた。「僕の目から見れば世の中の人々はずいぶんあくせくと身を粉にして働いているような印象を受けるんですが、僕の見方は間違っているんでしょうか?」
「あれは努力じゃなくてただの労働だ」と永沢さんは簡単に言った。「俺の言う努力というのはそういうのじゃない。努力というのはもっと主体的に目的的になされるもののことだ」
「たとえば就職が決って他のみんながホッとしている時にスペイン語の勉強を始めるとか、そういうことですね?」
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