原始人 (文春文庫)

著者
出版者
文藝春秋
価格
¥440

評価・詳細レビュー

(4.0点)
 表題はだいたい読みやすいからいいんだけど、ぼくは『アノミー都市』がおもしろいですね。
 あと『アホの壁』で気軽に読んだっていいじゃないか的なことを書いたけども、ここにはそういう態度を延々罵倒している文章があって、それがおもしろいというか。
――引用――
 こら。読みさらせこの脳なしの能なしの悩なしめ。手前だ。ふらふらと視線さまよわせ気軽、心安らか、自らは何ひとつ傷つかず読める小説がないかきょとつく手前のことだ。できるだけ自分の理解できる範囲内のことしか書かれていず肥大したおのれが自我にずぶずぶずぶずぶ食いこんでくることのないような小説のそのまた上澄みのみをかすめ取ろうとしている盗っ人泥棒野郎そうとも貴様のことだこの両性具有(ふたなり)め。自分と交接(さか)れる小説を読もうとしながらも自分では書くことのできない無学文盲の手前が、そもそも読む小説を選ぶことのできる生きものかどうか鏡を見てよく考えろこの糞袋。ははあ。自分のことではないと思っているな。おのれより低級な読者のことであろうと思い安心しているのだろうが……
――引用終わり――
 という感じで十ページくらい書いてあるんです。

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