安部公房・荒野の人

著者
出版者
菁柿堂
価格
¥2,100

評価・詳細レビュー

(3.0点)
 安部公房の初の評伝。評伝というのはなかなか悪い面を書かないんであまり期待していなかったが、まあファンとしては買った。
 最近出た安部ねりさんの『安部公房伝』はいかにも反抗期らしい娘という目線があって、その点よかったと思う。いかにも俗っぽい公房を見せられてちょっとショックを受けたが、それは自分が作品をどのように読んでいるのかを明かにしてくれた。
 公房は『砂漠の思想』で、ヘンリー・ミラーとの手紙をもらったときの話を書いている。ミラーの手紙は『砂の女』についてのちょっとした批評を終えると、えんえん日本人に対する憤りが書き連ねてあった(自分の作品が日本で売れていないのはけしからん、など)という。公房は「ミラーのような作家とは、作品の上だけでつきあっていたほうが無難なのかもしれない」と結んでいる。

 本の内容としては、ちょっと演出過剰のきらいがある。たとえば、花田清輝と決別して、公房はその後二度と花田と会うことはなく、ついには葬式にも出席しなかったとドラマチックに書いているのだが、もっと後のほうでは、公房は葬式などの儀式的なことが嫌いで、自分の葬式はやらなくていいと言ったこと、母親の葬式にも行かなかったことを書いている。

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