英文翻訳術 (ちくま学芸文庫)
日本語には、例えば「親に死なれる」だとか、「雨に降られる」、「夫婦喧嘩の最中に客に来られて困った」、などという言い方がある。こういう表現は、英語の受動態では表せない。「死ぬ」も「降る」も「来る」も、みな自動詞で、英語では、自動詞の受動態などというものは作れないからである。
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日本語の受身というのは、上の例で言えば、「親が死ぬ」、「雨が降る」とかいうことが、主語である人間にとって、迷惑であるとか、被害を受けるとか、困るとか(あるいは、「褒められる」、「世間に認められる」などの場合のように、利益になる、好ましいなどという)、利害の関係にあることを表す表現の形式であるといえるのではないか。
--出典: 英文翻訳術 (ちくま学芸文庫)
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