社会学入門―人間と社会の未来 (岩波新書)
大衆の現実主義はどうか。この時期に少年時代をすごしたわたしは、大人たちのこういう会話を耳にする。たとえばある娘がなかなか結婚しないことについて、その親がいう。「この娘は理想が高いので」と。この理想とは多くのばあいその文脈から、要するに経済的・社会的地位と生活能力が高い男性のことである。生活者の日常の会話の中で「理想」という言葉の指し示す実質は、ほぼこのようなものでした。(「理想の結婚」、「理想の職業」、「理想の住まい」、「理想の炊飯器」)。現実主義者も、またその理想を追っていました。