現代思想のパフォーマンス (光文社新書)
人間学があきらからにしたことのひとつは、ある親族名称を持つ者が他の親族名称を持つ者に対してどういう態度を取るべきかの決まりは、社会によってちがうということである。父親と息子が親しみ合うことが義務づけられている集団もあれば、子どもは親の前で息をひそめて怯えていなければならないと定めている集団もある。〈中略〉つまり、親族間の態度というのは、人間の内部の感情が自然に発露した結果ではなく、社会的に規定された役割演技だということである。