現代思想 2013年4月号 特集=就活のリアル
文科省が大学において推奨しようとしている現在のキャリア教育は、彼ら当事者の若者たちにとって、全く逆の意味をもち始めていることに注意しなくてはならない。大学におけるキャリア教育は、児美川のいう「権利としてのキャリア教育」であれば、朝井のいう、「装置」から外れる思考や想像力の可能性を若者に与えるはずである。しかし実際にさまざまな大学で導入されつつあるキャリア教育にしばしば見られるのは、それが就職課/キャリア支援課の就職支援イベントの延長であり、イベントの授業化・カリキュラム化になっているという事実である。就職コンサルタントが講師となり、どうすれば「employability(エンプロイアビリティ、雇用可能性)」を獲得できるかを講義する。業界人を呼んで、どんな人材を望まれているのかが語られる。もちろん、就職現場を材料にし、業界人とコミュケーションすることは、先述した現実に触れる意味でも重要である。しかし、それが「スムーズに」就職できるための適応の授業となるとき、それは、せっかくの「装置」はずしの契機を疎外する方向へと促進してしまう。(p148,樫村)