鬼の経営は、高度成長期では非常に効果的だった。高度成長期には、顧客の需要はそこに既に存在していたから、効率よく売ることが一番大事だった。効率を良くするためには、命令どおりに動いてくれる、単純マニュアル作業を丁寧に素早くやる人が大量にいれば良かった。
ところが最近の研究で分かって来たことは、鬼の経営や軍隊式マネジメントに象徴されるような、常に緊張感を強いられ恐怖が支配するような環境では、脳波がベータ波になってしまう。すると大量の人間に同じ行動をとらせるという観点からは効果的だが、個々人は学習能力が低くなり、創造性が発揮しにくくなる。
人間は安全にリラックスできる環境の下では、脳波がアルファ波になる。学習が効率的になり、創造力が増すんだ。今の時代は顧客の欲求を喚起しなければ売上が立たない。つまり欲求を喚起するような商品を創造する力が必要とされる。ということは現在では、仏の経営スタイルの方が合っている。ただ仏とはいってもただ単に優しいだけじゃない。そこにはきちんとした規律と厳しさを合わせ持っていなければならぬ。仏の経営の中には鬼の部分もある。
--出典:
成功者の告白 (講談社プラスアルファ文庫)