安閑園の食卓 私の台南物語 (集英社文庫)
「安閑園」とは、私が幼少時代の大部分を過ごした台南市郊外の屋敷の名前である。……私はそこで、普通思春期とか青春時代とかいわれる最も多感でもの思う時期を過ごした。南の国では時は限りなくゆっくり進む。あるいは私が子どもだったためにそう感じたのかも知れないが、安閑園では日々すべてが新鮮であり、時はつねに何物かを刻印しながら静かに流れていた。