反芸術綺談
評価 : (4.0点)

1960年代日本は高度経済成長期を迎え、美術もまた、それに呼応するかの様に新しい展開を見せました。その中で過激な運動の中に「反芸術」運動というものがあり、その中でも更に過激で社会に密接したものに「九州派」と言うグループが居ました。
「九州派」はその名の通り、福岡県で結成され、その構成員の多くは、芸術活動だけでなく他に定職を持つ所謂「日曜画家」でした。そしてそういう人達で構成されていたからこそ、高度経済成長期の影にあった1959年の三池闘争に代表される労働争議に関わりを持ち、だからこそ「九州派」は最も社会に密接した芸術団体と言えるのです。
本書ではその「九州派」の筆頭であった菊畑茂久馬が「九州派」の活動を振り返った回顧録であり、「九州派」の破天荒な活動や雰囲気を、当事者の人間からの生きた声として聞く事ができます。絵具の代わりにコールタールを、筆の代わりに箒を用いて作品を作り、自らの作品を東京襲撃の弾丸と称した、正に「反芸術」と呼ぶにふさわしい「九州派」の活動をこの機会に是非知ってみてはいかがでしょうか?


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