倫敦塔・幻影の盾 (新潮文庫)
評価 : (4.0点)

夏目漱石の初期作品集です。タイトルとなっている内「倫敦塔」はその名の通り漱石が実際にロンドンを観光した経験をもと書いた短編で、「吾輩は猫である」と同時期に書かれました。ちょっとしたホラー小説とも言えます。
「幻影の盾」は恐らくアーサー王伝説の「トリスタンとイゾルデ」に取材した作品です。これと同様にアーサー王物語のランスロットの物語に取材した作品として「薤露行」も本書に収録されています。
これらの収録された作品からわかる様に本書は「小説家夏目漱石」ではなく「英文学者夏目漱石」に近づく事が出来、より夏目漱石の原点に触れられる一冊だと言えます。夏目漱石は軽妙な文体で知られていますが、この本に収録されている作品はそれと比べると硬めの文体で書かれており、漱石に親しんでいる人には新鮮な感覚を与えるでしょう。


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