飾り火〈上〉 (新潮文庫)
評価 : (5.0点)

二十代の頃に読んだのですが、不幸なことに、これ、もう私的な愛のかたちの原形になってしまってます。どうなんだろ?本来ジャンルはミステリーになるのかな?連城氏の活字ならではの(活字でしか実現不可能な)トリッキーな物語運びは、読み進むにつれ「えーっ?」という仕掛けがいくつも施されています。ミステリーと言っても犯罪は一切起こらず、そこにあるのは行き過ぎた男女の駆け引き。冒頭に「不幸なことに」と書いたのは、愛が動機で繰り広げられる事件の数々の根底にあるのが、苛烈なまでの片想い(←これ重要。誰が誰に片想いしてるのか当時の僕は最後まで分からなかった)と底無しの嫉妬だから。ネタバレになるどころかミステリの種明かしになってしまうのでここには書けないけれど、「そこまでするか?!」ってくらいの強烈な罠を男女が互いに仕掛け合う。一連の事件を操っていたのは本当は誰なのか最後の最後まで分からないし、しかも犯人(犯罪は起きないので犯人という言葉は適切じゃないかも知れないけれど)の動機が明かされた時の衝撃はまだ若かった僕には凄まじいものがありました。僕が最も影響を受けた究極の恋愛小説。もちろんミステリー作品としての完成度も相当に高い超絶小説!


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