鉄鼠の檻 (講談社ノベルス)
評価 : (5.0点)

現在刊行されている京極堂シリーズでは今のところ一番好きな作品。いまさら京極堂シリーズの面白さについて書くのは野暮なので多くは語らないけれど、僕がこの作品をシリーズで一番に挙げる理由は、禅思想の理解を少しだけだけど深めることができたから。「少しだけ」というのは禅の奥深さ故であって、この作品に綴られている情報量の問題ではないことは断わっておきたい。作品中に中禅寺の口を借りて語られる「禅」についての蘊蓄は、かなり詳細で分かり易く京極氏の凄まじい知識量と勉強量には毎度のことながら驚かされる。実際に短期間ではあるけれど禅寺に入って修身を試みた僕が、当時はちんぷんかんぷんで理解が及ばなかった事柄の数々に「ああ、そういうことだったのか!」と合点がいったのだから。理解を求めること自体が禅の思想からは外れてしまうのだけれど・・・・。京極夏彦作品は総じて物語を楽しむ事と、知識欲を満たす事の両方ができるのでファンにならずにはいられません。


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