ワダチ (小学館文庫)
評価 : (5.0点)

「おいどん」と言えば、松本零士の持ちキャラの中でも「大四畳半大物語」「男おいどん」そしてこの「ワダチ」の主人公を務める人気キャラである。
「銀河鉄道999」にもゲスト出演しており、その際の名前は足立太であったと思うが、それは「男おいどん」のときの名前である。松本本人の談では、初登場は「大四畳半大物語」の大山昇太(おおやまのぼった)であったらしいが、本作でのおいどんの名前はタイトルどおり山本轍という。名前は違うが、それぞれのキャラ設定に特に違いはない。
「男おいどん」も途中までしか読んでないのだが、終盤は唐突にSFになるらしい。本作は、最初からSFとして描かれている。地球がもう危ないので、密かに亡命者を世界中から集めて外宇宙の惑星に移民させよう、というお話。
とにかく、松本零士の敗戦国コンプレックスというか、アメリカ嫌いが匂い立つほどに色濃く描かれていて、更に言うとイケメンに対するルサンチマンも凄い。あらゆる嫉妬の対象への恨み辛みを、本作の副主人公とも言える博士に吐き出させている感じ。
その博士の凶行をギリギリのところでおいどんが止めるのだが、その後のおいどんの台詞がまたいい。

「おいどんだって、したり顔で偉そうなことぬかしよる奴ら全員ぶち殺したらどんなにスカッとするか、毎晩毎晩考えとった!」

といった感じ。でも、実は松本零士は女性にモテていたらしい。


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