蝉声 (塔21世紀叢書)
評価 : (5.0点)

病に伏せ亡くなられた河野さんの遺稿をご家族が歌集として編まれた、最終歌集。
見たもの、感じたものをまっすぐに表現する方だったがゆえに、闘病の過程から死に至るその日までの一日、一刻が克明に伝わってくる凄絶さに、喉が詰まる。
ときおり歌に現れる、お孫さんや、お嬢さんの結婚に際し、注げる愛情を歌ったそのうつくしさも眩しい。
「わたくしはわたくしの歌のために生きたかり作れる筈の歌が疼きて呻く」
河野裕子というひとは、病めるときも歌人としてあろうとしたのではなく、生きるということは歌うことだったのだと、思った。
鬼気迫るその姿はでも真摯で、とても人間らしい。かくありたい。


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