笹まくら (新潮文庫)
評価 : (5.0点)

過去と現在を行き来しつつ、ラストは過去の一点に集約していく。主人公が懲役忌避に成功するとは知りながらもスリリングな展開で読ませる過去の逃亡生活と、明確な悪意が存在しないにも関わらず徐々に追い込まれていく現在の生活が交互に描き出されている。
憲兵の陰に怯えながら逃亡生活を続ける過去の方がなぜか輝いて見える。
作者が平和になったはずの戦後日本の「怪しさ」にスポットを当てているように思えた。

また丸谷才一の本を読んでみたい。


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