山椒大夫・高瀬舟 他四編 (岩波文庫 緑 5-7)

著者
出版者
岩波書店
価格
¥525
(5.0点)
今回、新潮社の森鴎外の全集を読んだ中で一番、僕が感銘を受けたのは、『高瀬舟』でした。

僕は、この『高瀬舟』において3つのテーマが存在すると感じましたが、『高瀬舟縁起』を読むと、そのうち2つは森鴎外自身が、この話の大元である翁草(おきなぐさ)を読んで感じた大きなものでした。

一つは財産という観念である。
二百文を財産として喜んだのが面白い。
今一つは死にかかっていて死なれずに苦しんでる人を、死なせて遣ると云う事である。

すでに、この時代に安楽死という考えが、医学社会にあり、陸軍軍医でもあった森鴎外は、その考え方を知っていたようです。

同じく『高瀬舟縁起』から
ここに病人があって死に瀕して苦しんでいる。
それを救う手段はない。

従来の道徳は苦しませて置けと命じている。
しかし、医学社会には、これを非とする論がある。
即ち死に瀕して苦しむものがあったら、楽に死なせて、其の苦を救って遣るが好いと云うものである。
これをユウタナジイという。
注)ユウタナジイ(仏) 極楽往生、安楽死

明治時代に既に“安楽死”という概念があったのですねぇ。
これには少し驚かされました。

[解説]
テーマ
1.財産と云うものの観念
2.安楽死
3.僕が考えるに、鴎外の一般庶民と権力の観念

「最後の一句」(モバイル:最後の一句)に見られる娘の「お上の事には間違は ございますまいから」という痛烈な権力批判のように、鴎外は官という立場にありながら、それも高い地位に、そういう庶民のしたたかさを知っており、愛情もあったのではなかろうか、と僕はそう考えるのです。

その他引用、詳しくは、
森鴎外「高瀬舟」解題 | KI-Literature(文学) http://j.mp/XXe75H にて。

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