確率捜査官 御子柴岳人 密室のゲーム

(5.0点)
著者の作品は、妻がはまってからというもの、読みやすさもあっ
てほとんど読んでいる。シリーズ化を前提とした、キャラ立ちし
た登場人物が出てくる著作がほとんどだが、本書も新たなシリー
ズを作りだそうという試みの一つだと思う。

探偵といえば相棒。それは、ホームズとワトソンから連綿と受け
継がれる不動のコンビ。本書でも岳人と友紀という男女がコンビ
を組み、漫才のボケと突っ込みのようなやりとりが繰り広げられ
る。

ただ残念なことに、そのコンビに、やりとりに、とても既視感を
覚えてしまう。というのも、著者の名を高めた、八雲シリーズで
の八雲と晴香のコンビに被ってしまうからであろう。男女の組み
合わせもボケと突っ込みめいたやりとりも似ている。

八雲シリーズは、当初から場を盛り上げる多彩な脇役を配してい
たのだが、本書は、わずかに上司が出てくるだけで、他の「こち
ら側」の配役は出て来ない。そのため、岳人と友紀のやりとりに
終始しているように思えてしまう。これはフィールドワークの無
い主人公を設定した以上、回避できない点かもしれない。

あまりよい評価を与えていないように思うが、本書も著者の他の
作品に比べ、読みやすい著作であり、確率という着目点は面白い
と思う。引き続きシリーズ続編が出た際は、シリーズ化への道筋
をどのように著者が作り上げていくかについて注目してみたい。

'12/04/20-12/04/21

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