からだの知恵 この不思議なはたらき (講談社学術文庫 (320))

著者
出版者
講談社
価格
¥1,208
(5.0点)
本書を手に取ったのは、この頃、我が家のヨーキーの小春が急激
に体調を崩し、何かせずにはいられなかった焦りから。

結局本を読み始めて2日後に、小春は天に召されてしまい、人間
の身体について説明された本書は小春にとって何の意味も持ちえ
ないものとなった。

だが、肉親が揃って健常である私は、発病から死への急速な移行
を間近で見たことで、生と死の狭間について理屈でしか理解して
いなかったことを改めて思い知らされた。その意味で、私にとっ
ての本書は、意味あるものとなった。

1932年に初版が発刊されたという本書は、人体に備わった恒常性
(ホメオスターシス)を提唱したことで知られているが、私自身
恒常性については浅いWikipedia的知識しか持ち合わせておらず
、本書を読んで恒常性についてのより深い知識を授けられたよう
に思う。

我々の身体を動かす仕組みの絶妙なバランスと、それがいかに精
緻な関連の上に立っているかを知る上で、1932年という時期に発
刊された本書は、医療を専門とするもの以外の読者にとっては実
に分かり易い入門編と思える。というのも、それ以降の劇的な科
学の進展は、医学をより一層専門化させ、本書のように分かり易
く全体的な概略を叙述することを難しくなったから。医学はそれ
が顕著な分野であるように思う。

もちろん当時の科学の限界故、今となっては私のような素人でも
間違っていると思える説明も稀に見つけることができるのだが、
その点を差し置いたとしても、本書の平易な記述から得られるべ
き知見は多いと思う。私をはじめ、IT機器の動作の仕掛けについ
ては精通しているのに、肉体の限界を忘れて暴走してしまう人の
なんと多いことか。

'12/02/08-'12/02/14

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