リーシーの物語 下

著者
出版者
文藝春秋
価格
¥2,400
(5.0点)
上巻のレビューに書いたけれど、じっくり読むという目標が、もろくも
くずれ、下巻は3日で読み終えてしまっている。

これは退屈になって斜め読みになったのではなく、物語の面白さに追わ
れてしまったため。

上巻のレビューに書いたように、大枠の展開は今までの作品と似たよう
な感じなんだけど、それは読んだ後だから言えることであって、著者の
ストーリーテリングの手妻に翻弄されてしまった下巻の読書体験であっ
たといえる。

加えて下巻になってからは展開も時制と語り手と場所が縦横無尽に入れ
替わりたち替わり現れるため、じっくりと考えながら読み進めると却っ
て混乱することになると思う。そう思えるほど大量に敷き詰められた布
石がつぎつぎとひっくり返っては眼前に現れていくような下巻の展開だ
から。

本書は再読をし、何度も味わったほうがよい類の小説ではないかと思う
し、再読を促すことこそがまさに著者の狙いなのではないかと勘ぐって
しまう程だ。

物語の喜びを味わわせることのできることが作家の喜びであるとすれば、
本書は成功していると思う。何せ、本書は死んだ作家が生前に残した意
思が、死後に大活躍する話だからだ。著者が死して後も、物語を読む喜
びを読者に与え続けられるとすれば、それこそ作家冥利に尽きること間
違いないだろう。

著者の作家としての意思が込められた小説として、後世に残る作品では
ないかと思う。

'11/12/14-'11/12/17

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