Keita Tokudaさんが評価・詳細レビューをつけました。
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「生きている状態とは何か」
内容はとにかくおもしろい。絶対に読んだ方がよい。特に分量的に大半を占める第一部は、ずいぶんと前に書かれたものなのに、なんかこうけっして古くないというか。少なくとも自分に大してはいろんな示唆に富む内容。
それ以上に、清水博という人の魅力を感じたなぁ。時代を先駆けた人だったんだろうなって思った。
これの第一部が書かれたのは、分子生物学が大手を振って生命科学研究の世界を席巻し始めた頃。しかし、清水博は、ダイナミックなシステムとしての生命を追い求めた!
第一部の前半は、エントロピーやエネルギー、静的な秩序(結晶などの自由エネルギーの低い状態)の解説から始まり、散逸系の動的秩序の説明として、レーザーを用いてハーケンのシナジェティックスの話をしたり、BZ反応を用いてプリゴジンの散逸構造の話をしている。
しかし、おもしろいのはやはり清水博らの独自の成果に関する言及があるその後から。清水博は、筋肉の研究において、「動的協力性」を実験において示した。それはプリゴジンの散逸構造でもあったし、ハーケンのシナジェティックな理論とも共通するものがあった。それらの理論の具体的な例として示した。(ちなみに津田一郎はこれに対してをマックスウェルデーモンとの関係で興味を持っているそうだ)。「動的協力性」の概念は筋肉にとどまるものではない。細胞内のレベルから、細胞群、組織、大脳皮質のハイパーコラム、人間のコミュニティ、社会、文化、生態系、全宇宙まで広げられる概念である。
さらに、後半では情報の観点から生命に関する考察が重ねられている。印象に残ったのは、「シャノンの情報理論では、意味の荷い手(アルファベットだとかデジタル信号だとか)としての情報が扱われるが、生命にとって重要なのは、生物にとっての『意味』であり、それを扱わなければいけない」ということ。うーん、なるほど!
そして、科学、科学技術、社会、哲学、西洋・東洋などの歴史と未来についての考察。
第二部は、かなり時間がたってから書き加えられた部分。その後発展した非線形力学の概念であるカオスに言及してあったりする。また、清水博の興味は大脳へと向かっており、それに関する考察もある。