以前、書いた『逝きし世の面影』ね、僕があの本を書いたのは、ああいうことに戻りましょうじゃないんです。ああいう時代が良かったよーでもないの。僕はね、違う世の中が立派に成り立っていたんだよということを言いたかったの。要するに、現代の社会を相対化したかったんです。人間が幸せになるには、現代の社会しかない、いまのような文明しかない。いまの文明にはいろいろ欠陥もあるけれど、昔に比べたらずっと幸せになっているじゃないかってわけだね。そんなの、いまの社会の価値観や常識で縛られてしまっているのにね。(渡辺京二 p.66)
--出典:
ミルフイユ 04 今日のつくり方