無名の頃 (誰にでも「無名の頃」はある。)
デザインっていうのは基本的にはシンプルがベストだと思うんです。
シンプルでわかりやすいのが最高に格好いい。だけど最初からシンプルなことばかりやっていると、
シンプルの意味がわからなくなっちゃう。田中一光さんの丸や四角なんて、最初は何がいいのか全然
わからなかった。だけどそのシンプルさ、潔さの中にどれだけの密度があるかっていうことが今は分かる。
だから若い内は、とにかく世の中に沢山ある情報を全部受け止めて、ごちゃごちゃならごちゃごちゃなりに自分の
秩序を見つけていけばいい。情報を減らしてしまうのは簡単だけど、まずは全部入れ込んでみたらいいと思う。
こめられた情報が多ければ多いほど、デザインの密度が細かければ細かいほど、どんどんフラットに、シンプルに
なっていくと思うんです。そうやって最終的に生まれたシンプルっていうのは、他の人がマックで手早く作った
シンプルには絶対負けないぞっていう自信がある

渋谷克彦