通貨が経済に与える影響は甚大だ。国家の財政、内外の金融、企業業績、そして人々の生活さえも為替の動向と無縁ではない。世界金融危機以後、不安定さを増した金融システムと経済の動きを精緻に検証し、ドル覇権の行方、ユーロ圏の諸問題、人民元や円の未来を見極める。複雑に絡み合う“通貨”“実体経済”“財政金融政策”の三つ巴を歴史を踏まえて読みほどき、世界経済の持続的成長のためにいま何をなすべきか考える。
ドルは地位低下してはいるもののこれに代わる手段はないため基軸通貨としての地位はしばらくは揺るがない。
一方、ユーロは、ギリシャ危機に代表されるように、国際金融のトリレンマという不安定さを内包しており先行きを疑問視している。
さらに、人民元については、中国当局の厳格な管理によって、国際通貨としての役割はまったく果たしていない。
膨大な貿易赤字をたれ流し続けるアメリカと、外貨準備を貯め込む輸出依存型の日本と中国の間のグロ-バルインバランスが持ない。続不可能な水準に達しつつある今、どこかでこの複雑な方程式を解いて行かなければなら