応用ゲーム理論の大家故マクミラン教授による「市場」に関する啓蒙書。経済学者が市場の役割について述べているからといって、決していわゆる「アメリカ型市場原理主義」についての論考ではなく、むしろ市場という制度が持つ欠陥やそれを補うための制度設計の重要性が指摘されています。折りしも今年は制度設計に関する理論的貢献にノーベル経済学賞が与えられました。これからますますメインストリームになって行くであろう、経済理論に基づいた制度設計の世界
市場とは「唯一の自然な経済」であり、どの様な環境においても、自生的で立ち直りが早い。しかし、それは「人間的な不完全性を伴った、人間による発明物」であり、ルール、慣習、制度による支えを必要とする。市場をうまく機能させるには、(1)情報の流通(情報の非対称性)、(2)信頼、(3)競争の促進(独占・寡占)、(4)財産権の保護、(5)外部不経済の抑制、といった課題に応えることが必要である。