イノベーターの条件―社会の絆をいかに創造するか (はじめて読むドラッカー (社会編))
【「はじめて読むドラッカー」シリーズ】
本書は、今盛んに論じられている「ニューエコノミー」の前提となる「ニューソサエティ」がどのように生まれ何を形作るかをテーマに、著者のこれまでの歴史分析、社会的考察を再構成し、新しい時代の変革に向けて描写と分析を試みる。
縦横に繰り広げられる「ドラッカー史観」や哲学的言説の数々は、現在の世界が直面する状況に肉薄するものである。日本にとってそれは、たとえば経済的組織と個人の生、高齢化社会と平等、教育における学校の役割、NPOとコミュニティといった問題にかかわってくる。本書の役割は、さまざまな価値が多元的に錯綜するこうした諸課題において、個人の位置づけや機会のありかを探り、ひとつの視座を読者に示してくれることにあろう。最後に、個人としてどう生きればいいかという問いに対する答えとしてキルケゴールを引用するあたりは示唆に富み、凝り固まった思考を揺さぶる。ドラッカーを支持する人はもちろん、即効性だけをねらったビジネス書に物足りなさを感じる人にとって、非常に意義深い1冊である