明日のコミュニケーション 「関与する生活者」に愛される方法 (アスキー新書)
コミュニケーション・デザインの諸相②「いい商品・サービスの提供」
情報を伝え広めるために、商品力はまず磨くべき大切なポイントだ。
ソーシャルメディア全盛時代、企業自身が生活者に共感される活動をしているかどうかが大切になる。その一番の部分はやはり「本業」だろう。平たく言えば「いい商品やサービスを提供しているか」である。いい商品も作らずに、コミュニケーションばかりうまくても誰も信用しないし、逆にいい商品さえ作れば、関与する生活者が自らそれを広めてくれるのだ。
では、この時代「いい商品」とは何か。
ボクはポイントは3つあると思っている。「商品自体に共感を纏わせること」、「透明性が確認できること」、そして「生活者自身を商品開発に参加させること」の3つである。つまり、商品自体が「共感」と「確認」と「参加」というSIPSのプロセスとして機能することである。
「商品自体に共感を纏わせること」とは、要するに商品自体がSIPSの起点になることに他ならない。商品自体に「生活者が共感する要素」があるので、自然とSIPSの流れに乗っていく。
たとえばアップルの「マックブックエア」は「世界で最も薄いノートブック・コンピュータ」という共感を押し出した。もしかしたら日本のメーカーの商品の方が機能的には優れているかもしれない。スペックが最高のものをあれもこれも入れ込むからである。でも、ある部分に特化した商品の方が共感度が高くなるのだ。
この場合、ソーシャルメディア上で何が「共感」や「参加」を呼ぶかを理解した人間がその商品開発プロセスに加わり、商品自体に魅力を付け加えることが役に立つ。メーカー視点ではなく生活者視点の人間が入ることが大切だ。
二つ目の「透明性が確認できること」とは、トレーサビリティーや商品開発過程の透明化だ。これはSIPSにおける「確認」を容易にし、とても共感されやすくなる。
最後の「生活者自身が商品開発に参加させること」は、いわゆるクラウド・ソーシングという形態がイメージしやすいと思う。たとえばスターバックスは、ソーシャルメディア上で生活者の意見をオープンに募集し、店の改良をしたり商品開発したりしているが、それらに加わった人たちはいきなりエバンジェリストになり、友人・知人に「私の意見が通った商品だ!」と伝えたりする。その「参加」はハイパークチコミを起こす可能性が高い。