日本の大学は、自らの「教育」のレリバンス(意義)の「証」を立てる基準をどこにも持ってこなかったのではないかということです。大学における「研究」であれば、学会レベルでの評価等を通じて、自らの研究レベルを示すことができます。しかし、「教育」となるとそうはいきません。大学の学部は、専門教育を行う機関ですから、本当はもっと学生たちが身につける専門性のレリバンス、とりわけ職業的レリバンスによって評価されてよいのかもしれません。しかし、ご承知のように、日本の労働市場は職種別に構成されてはいませんし、それぞれの職とそのランクごとに求められる職業的(専門的)知識やスキルの内容が明示されたりはしていません。だから、日本の大学では、自ら専門教育の職業的レリバンスによって「教育」レベルの「証」を立てるということができないのです。入学難易度や就職実績は、本当はたたの「代理」指標に過ぎません。しかし、代理ならぬ「本体」の指標がないわけですから、これらが脚光を浴び、突出してしまうのではないでしょうか。(p88)
--出典:
現代思想 2013年4月号 特集=就活のリアル