筒井(2010)は、文部科学省が企図する「キャリア教育」は、「自己責任論」「個体還元主義的能力観」を助長することで、人間らしく生きていける公正な労働世界を創り存続させていこうとする「希望ある労働者」を形成できないとする。筒井は調査によって、「労働の実態・制度・構造に関する知識の摂取や理解が不足しているほど、成果主義を信奉するほど、労働行政の役割を等閑視するほど、新卒正社員就職に自信があるほど、自己責任論に賛成である」と指摘する。またここで昨今やっと提唱され始めてきた「労働者の権利教育」でさえ、個人主義であれば、自己責任に回収されると警告している。(p148,樫村)
--出典:
現代思想 2013年4月号 特集=就活のリアル