「働くべき」というとき、そこで想定されている仕事は何か?「自活し子どもを養うために欠かせない収入源であり、平日のほとんどの時間を費やす主要な所属先」とリジッドに捉えるのであれば、そのような仕事はますます減少しており、より多くの働かない・働けない若者を生み出し続けてしまう。
働くことを、「食いぶちを得ること」や「子どもを持つこと」、「アイデンティティの帰属先であること」などと切り離し、「社会とつながる」活動を幅広くさすものとして、緩やかに構想していく必要がある。たとえば、親元を離れ家族を持ち自活するうえで必要な資金を、たった一つの仕事から得るのではなく、基本的な所得保障といくつかの仕事の組み合わせから得ていけるようにする。所属も多元化し、一枚の名刺やIDカードが「その人が何者か」を明かすのではなく、複数の場や関係性を束ねる結節点として、自己の固有性が証明されるようなかたちにしていく。(p176,貴戸)
--出典:
現代思想 2013年4月号 特集=就活のリアル