出産前後の環境―からだ・文化・近代医療 (講座 人間と環境)
柘植:…ではなぜ「自然」出産を求めるかというと、自然がいいものという、ひとつの価値観というか、イデオロギー性があると思うんですね。
秋道:何でも自然がいいという価値観がある。例えば無農薬のものだったら病気にならないとか。出産においては自然は母体にいいのか、子どもにいいのか、どちらなんですか。
柘植:わたしが言いたいのは。自然ということについて人それぞれに、自分の生活または都合に合うように定義づけているということです。

秋道:原自然なんてありえないと思いますが、自然というのは文明化されて医療化されたものにたいするひとつのアンチテーゼみたいなもので、何かそこに置いておかないと、不安だというものを確保してある。
田中:かなり技術的に、この日に産みたい、あるいはこの日に産ませたいという事情で、薬の投与とかホルモンのコントロールができますよね。そういうことが行われるようになって自然出産という言葉が出てきたのか、もっと以前からか…。
松岡:…70年代あたりから非常に機械化されて薬も使ったおさんが出てきて、それにたいするアンチでテーゼとしての意味もあると思いますね。
秋道:化学肥料農業にたいする有機農業みたいなものですね(笑い)。