心の脳科学―「わたし」は脳から生まれる (中公新書)
評価 : (5.0点)

宇宙や歴史、物理など、学問の成果にわくわくさせられる分野は色々とあるけれど、
かつて心理学の本を色々と読んだことのある経験から、脳についても関心をもって
いて、宇宙論と同じぐらい新しい発見が次々とあるこの分野にはなるべくついてい
こうと思っている。わからないなりに。

この本を読んでいて、非常に読みやすくなるための工夫がしてあるのがすごい。内
容は決してやさしくないのだけれど、随所に一般人の感想めいたセリフが挿入され
ていて、著者も随所に軽口をたたく存在として登場する。これらの工夫によって、
難しい内容でも先に読み進めようと思わせる。

もちろん内容は難しいだけでなく、きちんと図やイラスト、写真などがふんだんに
使われていて可能な限り理解の手助けになるようにしてくれている。なによりも、
採り上げられている実験結果や成果が非常に興味深く、私が子供のころにSFとして
採り上げられていたようなことが次々と実現間近では?と思わせるようなところま
できている。

それはもはや、心理学という学問の存在感を薄めるようなレベルに来ていると思う。

ただし、読み終えるにあたって私の胸に刻まれたことの一つとして、著者が文中で
繰り返し述べていることだけれども、この成果を早とちりすることはやめようと思
う。例えば遺伝子解析から様々な脳の弱点が予測できてしまうとか、考えることが
あらかじめ予測できてしまうとか、それによる安易な飛びつきと、社会に与える悪
影響について、口を酸っぱくして著者は警鐘を鳴らしている。

私もなるべくこの本を読んで得た最新の知見について、知ったかぶりはやめようと
思う。

'11/11/12-'11/11/13


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