テンペスト 下 花風の巻
評価 : (5.0点)

本書は日本と清国に翻弄された琉球の歴史が舞台だが、琉球の埋
もれようとする歴史以外に著者が問うているのは、ジェンダーと
しての性についてである。

女であるがゆえに科試を受けることのできない主人公が、宦官と
して科試に合格し、役人として生きていき、科試に挫折した主人
公の兄は女形としての人生を選ぶ。主人公は後に役人でありなが
ら、王に気に入られ後宮に入って王の子をなす別の人生も同時に
生きる。

かなり荒唐無稽な設定と筋立てであるが、思い切った設定によっ
て、かえって本書が性の平等をなくすことがどれだけ難しいかに
ついて、問題提起しているように思える。性別による差別をなく
すことと、性別を超越して活躍することは別であることを示して
いる。

男女関係なく、能力がある人は登用すべきだし、活躍すべきだが、
生物として限界があるのもまた事実。

本書で主人公の波乱万丈な女としての一生に、性というものの不
思議さと、社会が被せる不条理な規制を考えてみるのもよいかも
しれない。

'12/04/04-12/04/05


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