さよなら妖精 (ミステリ・フロンティア)
評価 : (5.0点)

自分たちを取り巻く文化について、意識することなく同化するこ
とができ、自分の属する文化を客観的に見つめることができるよ
うになるのは、思春期が過ぎた頃ではないだろうか

本書は、自分たちの文化への距離が定まったばかりの主人公たち
が、異国からの旅人に接する中、異文化への理解を果たそうと苦
心する中、意識を確立させていく物語である。

そこにどのように推理小説としての肉づけをしていくのかについ
ては、面白いアプローチを試みている。それは、発する側にとっ
ては当り前のことが、受け取り側の文化の違いによって、謎とな
るということである。

著者の得意とする「刑事事件が全く出てこない日常の謎」モノと
いえばその通り。だが、本書では、発する側にとっては謎でも何
ともないが、受け取り側にとって謎となる。というところが毛色
の変わったところである。

つまり、話の筋の運び方にとっては、読者の興味を惹かず、単調
になってしまう。また、謎を発する側と受け取り側の理解力をき
っちり読者に説明しないと、謎が登場人物にとっての謎でしかな
く、読者には筋も妙味もさっぱり分からない物語となってしまう。

そのあたりをうまく処理していたのはさすがというべきか。

'12/06/18-12/06/19


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