黒王妃
評価 : (3.0点)

 時代にも人物にも興味があるのにどうしてものれない、はまれないという作品はあるのだなあと、同著者の『新徴組』を読んだ時とはからずも同じ感想を抱いてしまった。地の文に直接モノローグを混ぜる自由間接話法的な文体がこの作家の特徴といっていいかと思うが、本作ではそれをさらにおしすすめ、カトリーヌのモノローグと三人称での説明文とが交互に展開する形式をとっている。地の文にはこの上さらに登場人物の発言や独白がかっこなしで唐突に出てきたりもする。  
 こういった文体があることも知っているが、会話口調が多すぎてどうしても安っぽさが否めない。宗教戦争の時代のフランスが舞台とはいえ、 読者は現代の日本人なのだから分かり易さが必要、というのもわかる。だが、一人称の会話調が繰り返されればされるほど、どうしても稚拙な感じがしてしまう。平易であることが拙さの謂ではないともわかっているけれど。  
 結局相性なのかなと思いつつ、歴史の勉強にはなるけど文芸作品としては、個人的には全く好きになれませんでした。王妃にもあんまり共感できず、読みやすいはずなのに文章を辿るのがひたすら苦痛で……。「ええ、ええ」が出てくるたびイラッときてました(ほんとこればっか)。バルザックの書いた評伝を読む方がましな気がする。

 映画の『王妃マルゴ』よりは時代背景などは理解できた気がします。アンブロワーズ・パレやノストラダムスの時代。


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