労働――働くことの自由と制度 (自由への問い 第6巻)

著者
出版者
岩波書店
価格
¥2,100

引用

佐藤 ...コミュニケーション能力という、職務よりももっと扱いにくくて限定できないものを空想し、それを基準に使って、ワークの位置付けを正社員からギルドへ、強引に切り替えようとした。でもそんなやり方で放り出される方はたまったものじゃない。ギルドにすること自体は、一つのやり方ですが、そのときには、職務という形できちんと限定をかけてやらないといけない。
広田 よけいなものは測らない、と。
佐藤 よけいなものは測らない。それがとても重要な点です。ところが現実には、コミュニケーション能力みたいな、測れもしないものを選抜基準にしてギルドにする、という方向に突っ走った。これは、社会学にとっても、この十数年でやった手痛い失敗の一つです。
広田 どういうことですか。
佐藤 社会学もコミュニケーション能力をめぐる変な幻想をつくった共犯ではあるよな、と。
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佐藤 ...コミュニケーションは主体の間で成立する出来事です。だから、そもそも個体化できない。かつての日本型の社会でも、そのことはかなり自明に理解されていた。
ところが、最近は「コミュニケーション能力」という言葉がさかんに言われます。コミュニケーションは本来、特定の誰かに固体化できないからこそコミュニケーションなのですが、それをあたかも個体の性能として特定できるかのように語る。コミュニケーション能力というのはそういう言葉です。
...(略)...ないものはないとして、扱うべきだった。
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一つの原理できれいに割り切れないなら、つぎはぎで考えていくしかない。(P49)
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