労働――働くことの自由と制度 (自由への問い 第6巻)
佐藤 ...コミュニケーション能力という、職務よりももっと扱いにくくて限定できないものを空想し、それを基準に使って、ワークの位置付けを正社員からギルドへ、強引に切り替えようとした。でもそんなやり方で放り出される方はたまったものじゃない。ギルドにすること自体は、一つのやり方ですが、そのときには、職務という形できちんと限定をかけてやらないといけない。
広田 よけいなものは測らない、と。
佐藤 よけいなものは測らない。それがとても重要な点です。ところが現実には、コミュニケーション能力みたいな、測れもしないものを選抜基準にしてギルドにする、という方向に突っ走った。これは、社会学にとっても、この十数年でやった手痛い失敗の一つです。
広田 どういうことですか。
佐藤 社会学もコミュニケーション能力をめぐる変な幻想をつくった共犯ではあるよな、と。