邂逅の森

著者
出版者
文藝春秋
価格
¥2,100
(5.0点)
常々、人間たかが生物であり自然に対して思い上がることなかれ
、との思いを肝に銘じているのだが、ITという仕事柄もさること
ながら、日々の忙しさにかまけた生活を続けていると、自然への
畏敬の念を忘れがちになる。

そんな時は本書を読むとよい。明治から昭和にかけての一人のマ
タギの生の営みがあますところなく書かれており、山の人外の過
酷さと静寂の中の美しさは、自然に対する畏敬を再び呼び覚まさ
れるに違いない。

本書は山形秋田の奥深き山村を舞台に、自然の中で抗い、時には
戦い、恵みに生を授けられるマタギの過酷な生活が書かれている。

自然描写の美しさもさることながら、写真を通じてや安全な麓か
ら眺めていたのでは決して体験することのない、容赦ない山の厳
しさについての緊迫した筆致の連続は、今の都会の暮らしに対し
て飽き足らぬ思いを頂き、淡い自然への憧れだけで自然保護を訴
えることに対する警鐘ともとれる。

山の自然の荒々しさの中で抗う人としての生きる姿と対比して、
里でのヒトの性の営みについても生々しく描かれているが、生物
としてのヒトをこれほど思い起こさせることもなかろう。だが、
生き物としての人を突き付けられても不快な気持ちにはならず、
むしろすがすがしくさえ思えるのは、たかが生き物として蔑むの
ではなく、むしろ逆であり、本書が日々の暮らしを懸命に生きる
ことへ大いなる賛歌であり、人が素朴に生き、人を愛し、敬虔に
山、ひいては自然を体現する神に感謝を捧げることの素晴らしさ
を歌い上げているからではないかと思う。

明治から昭和に至るまでにマタギの世界に押し寄せる文化的な生
活や工業的な実情についても克明に頁が割かれており、徐々に前
近代的な自然と一体となったマタギが、文明の波に流されていく
様子は、昔の暮らしに比べて失いそして得たものについて考えさ
せられる。

'12/03/09-12/03/16

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