日常的実践のポイエティーク (ポリロゴス叢書)
空間と場所の区別…。場所というのは、もろもろの要素が並列的に配置されている秩序のことである。…ここを支配しているのは「適正」かどうかという法則なのだ。…場所というのはしたがって、すべてのポジションが一挙に与えられるような布置のことである。…空間というのは、それを方向づけ、状況づけ、時間化する操作がうみだすものであり…空間とは実践された場所のことである。…読むという行為も、記号のシステムがつくりだした場所ー書かれたものーを実践化することによって空間をうみだすのである。…メルロ=ポンティも、「幾何学的」空間…とはちがったもうひとつの「空間性」を区別し、それを「人間学的空間」とよんでいた。…このような見かたにたてば、「さまざまな空間経験の数だけ、空間の数があることになる」。世界の内に在るという「現象学」がメルロ=ポンティのこのパースペクティヴを規定しているのだ。(p.242〜243)
「戦略的な」合理化というものは、…「周囲」から「自分のもの(プロープル)」を、すなわち自分の権力と意志の場所をとりだして区別してかかる。言うなればそれはデカルト的な身ぶりである。〈他者〉の視えざる力によって魔術にかけられた世界から身を守るべく、自分のものを境界線でかこむこと。科学、政治、軍事を問わず、近代にふさわしい身ぶりなのだ。…こうした戦略にたいして…わたしが戦術とよぶのは、自分のもの[固有のもの]をもたないことを特徴とする、計算された行動のことである。…戦術には自律の条件が備わっていない。戦術にそなわる場所はもっぱら他者の場所だけである。…それ(戦術)は、…「敵の視界内での」動きであり、敵によって管理されている空間内での動きである。だから戦術には、グローバルな計画をたてることも…できない。戦術は、ひとつひとつ試行錯誤的にやってゆくわけである。…(戦術は)時のいたずらに従わねばならない。所有者の権力の監視のもとにおかれながら、なにかの情況が隙をあたえてくれたら、ここぞとばかり、すかさず利用するのである。戦術は密猟をやるのだ。意表をつくのである。(p.100〜102)
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