「空気」と「世間」 (講談社現代新書)
「私は『世間体が悪い』という言い方しないのになあ」と思っている若い読者がいると思います。「両親や祖父母は言うけど、今どき、『世間様に申し訳ない』とか『世間体が悪い』なんて言わないし、思っていないんだけどなあ」という人です。〈中途略〉
ある大学の講演会で、これから書く「世間」の特徴をいろいろあげました。大学生たちは、興味は示しても、どこか他人事のように聞いていました。
ところが、「この『世間』が流動化して、どこにでも現れるようになったのが、『空気』なんだよ」と言った途端、教室の空気が一変しました。それは劇的と言っていい変わり方でした。(p51)