科学の方法 (岩波新書 青版 313)
自然科学は、自然の本態と、その中にある法則とを探求する学問である。
 しかしその本態とか、法則とかいうものは、あくまでも科学の眼を通じてみた本態であり、また法則である。それで科学の真理は、自然と人間との協同作品である。
 もし自然界に、人間をはなれて、真理というものが、隠されているならば、それを発掘すれば、それでおしまいである。もちろん宝はたくさん隠れているので、一ぺんでおしまい、ということではない。しかし数多くの宝の中から、一つずつ見つけていけば、手の中に握った真理が、だんだんふえていき、未知の分が、それだけ少なくなる。もしこういうものならば、科学はいつか、宇宙の真理を全部見つけてしまうであろう。
 しかし科学の真理が、自然と人間との協同作品であるならば、科学は永久に進化し、変貌していくものである。-結びp.197-
--出典: 科学の方法 (岩波新書 青版 313)
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