水中都市・デンドロカカリヤ (新潮文庫)
評価 : (5.0点)

 初期短編集だが、文体はすべて直されているため読みやすい(古い文体は講談社文芸文庫の『終わりし道の標べに』で読める)。
 表題作『デンドロカカリヤ』は公房の作品でも一風珍しい文体であり、何が珍しいと言って他にはない文体だということである。
 また戯曲『友達』の原形である『闖入者』、カフカのところで挙げた『空中楼閣』もここに収録されており、何より自分にとって名短編である『手』が入っている。ほんの九ページほどの短い話なので、安部公房をぜんぜん知らないという人はとりあえずこれを立ち読みしてみるといい。店員に嫌な顔をされる前に読み終えられること請け合いである。


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