図説 日本妖怪大全 (講談社プラスアルファ文庫)
評価 : (3.0点)

 中には「単にちょっと変わった人じゃねーの?」という妖怪もいて、いかにも水木しげるらしいというか、適度にテキトーな解説がついていておもしろい。たとえば有名な「ぬらりひょん」は、ただ人が部屋をあけた隙にお茶かなんか飲んでしまうだけで、とくに害はない。人並み外れているのは頭の長さくらいである。さらに「川男」というのは、川の近くに二人並んで物語を読んでいるだけの妖怪で、やっていることだけではなく見た目まで人間そのものだ。
 おれが印象に残ったのは「海坊主」である。これは浜辺を力持ちの男が歩いていると海に引きずり込もうとする妖怪で、そういう話はたくさん残っているが、おそらくオットセイではないか、と水木は言う。おもしろい、というのはこの海坊主を捕まえたという話だ。ある力持ちがやはり浜辺で海坊主に出会い、ヌルヌルした体をこすりつけられたが、ひるまずに縄でふんじばり、村の古老に見せに行った。すると、
――引用――
「これは”海坊主”というものであろう。体をこすりつけてくるのはかゆいのであろう」
 という古老の解説でケリがついたという。
――引用終わり――
 すごいケリのつけかただが、村のじいさまの話でケリがついてしまうというのはかえって説得力もあり、なにか笑うところなのかどうか迷いながら納得はした。
 ただあんまり人に勧めたい、という本ではない。妖怪(水木しげる)が好きな人には勧めるまでもないだろうし、好きでない人には勧める必要がないからである。


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