山椒大夫・高瀬舟 (新潮文庫)
評価 : (4.0点)

 これと『ヰタ・セクスアリス』しか読んでない(しかもこちらは内容をほとんど覚えてなかった)ので、「森鴎外は好きか?」と訊かれても答えづらいが、『高瀬舟』は好きだ。
 三島由紀夫の『文章読本』で鴎外と泉鏡花を比較していたので、鏡花も買ってみたが、あまりにも文語だったのでそっと本棚の奥へしまった。これは読まないような気もする。
 とにかく『高瀬舟』はまず「におい」が配置されていて、
――引用――
 その日は暮方から風が歇んで、空一面を覆った薄い雲が、月の輪郭をかすませ、ようよう近寄って来る夏の温かさが、両岸の土からも、川床の土からも、靄になって立ち昇るかと思われる夜であった。
――引用終わり――
 それを感じているうちに話は進んで、時間も進んで、すーっと舟は行ってしまうと。


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