どこから行っても遠い町 (新潮文庫)

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¥540

評価・詳細レビュー

(4.0点)
東京の外れにあるという、架空の町の住人たちによる連作短編小説。
登場人物たちが少しずつ重なり合って、(男女関係が主だが)ささやかな日常を描きだす。
最終話の人生譚とも相まって、ともすれば、人生賛歌のようにも読める。

けど、僕は作者がその裏側で提示している「なにか」を怖く感じた。
それは、不安なまま、確証もなくただ日常を信じ続けて生きるしかない、危うさと怖さ。

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(4.0点)
切ないけれど救いのある短篇集。「ざらざら」「センセイの鞄」に続いて、川上弘美の本は3冊目だけれど、この人は切ない話を書くのが得意なのか、単に自分の好みなのか、切なさがよい。
アニメの「秒速5センチメートル」で欝になる人は、たぶん、川上弘美もダメだと思う。

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引用

おれは何も決めなかったと思っていた。決めているのは、おれ以外の者たちなのだと思っていた。でもそれは、違っていた。
おれは、生きてきたというそのことだけで、つねにことを決めていたのだ。決定をする、というわかりやすいところだけでなく、ただ誰かと知りあうだけで、ただ誰かとすれちがうだけで、ただそこにいるだけで、ただ息をするだけで、何かを決めつづけてきたのだ。
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「だって、家が買えちゃうじゃない、わたしが働けば」
軽く言って、おれの言葉を一蹴する。おれの給料だけでは家は買えない、と言わないのが、干秋のやさしさである。
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